令和8年度診療報酬改定では、医療従事者の継続的な賃上げを支援するため、「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の注5」が新設されました。
「注5とは通常のベースアップ評価料と何が違うの?」
「自院は注5を算定できるの?」
「様式95と様式98は、どちらを提出すればいいの?」
など、ベースアップ評価料の届出や算定について、医療機関からお問い合わせをいただく機会も増えています。
今回は、令和8年度診療報酬改定における外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の注5について、算定要件や届出時のポイントを分かりやすく解説します。
1.「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の注5」とは?
外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)は、医療機関に勤務する職員の賃上げを支援するための診療報酬上の評価です。
令和8年度診療報酬改定では、ベースアップ評価料について、継続的な賃上げに取り組んでいる医療機関をより高く評価する仕組みが設けられました。
それが「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の注5」です。
簡単にいうと、
一定の要件を満たし、継続的な賃上げに取り組んでいる医療機関は、通常の外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)よりも高い点数を算定できる
という仕組みです。
なお、「注5」は新しい評価料そのものではなく、外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)に設けられた取扱いです。
2.通常の「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)」との違い
令和8年6月から令和9年5月までの外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)は、通常の点数と注5で以下のような違いがあります。
| 算定区分 | 通常 | 注5 |
|---|---|---|
| 初診時 | 17点 | 23点 |
| 再診時等 | 4点 | 6点 |
| 訪問診療時(同一建物居住者等以外) | 79点 | 107点 |
| 訪問診療時(上記以外) | 19点 | 26点 |
このように、注5を算定できる医療機関では、通常の外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)よりも高い点数を算定できます。
そのため、自院が注5の算定要件を満たしているか、必要な届出を行っているかを確認することが重要です。
3.注5を算定するためには?
注5の届出を検討する際には、これまでのベースアップ評価料の届出・算定状況や、賃上げ実績などを確認する必要があります。
令和8年度の厚生労働省の「ベースアップ評価料の届出に必要な様式早見表」では、これまでの届出状況などによって、令和8年6月以降に算定する評価料や必要となる様式が整理されています。
例えば、これまでのベースアップ評価料の算定状況によって、
- 外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の注5を算定する
- 外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)と外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)を算定する
- 入院ベースアップ評価料を選択する
など、届出の内容が異なる場合があります。
そのため、「以前からベースアップ評価料を届け出ているから、注5をそのまま算定できる」とは限りません。
自院のこれまでの届出・算定状況を確認したうえで、令和8年度の届出内容を判断する必要があります。
4.「5.5%」「8%」の賃上げ実績とは?
注5についてお問い合わせの多いポイントの一つが、賃上げ実績の要件です。
令和8年度の届出では、これまでベースアップ評価料を算定していなかった医療機関であっても、一定の賃上げ実績を示すことで、注5の届出につながるケースがあります。
厚生労働省の早見表では、令和6年度から令和8年度までの賃上げ実績について、
- 対象職員:計5.5%相当
- 事務職員:8%相当
の実績を示せる場合について、注5を含む届出のルートが示されています。
ここで注意したいのは、単純に「前年と比べて給与が5.5%上がった」という意味ではないことです。
賃上げ実績については、対象となる職員や給与項目、基準となる時点などを確認したうえで判断する必要があります。
5.届出には「様式95」と「様式98」が関係します
令和8年度の「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の注5」は、様式95と様式98を使用して届出を行うケースがあります。
厚生労働省が公開している「様式98」は、
「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の注5」等の施設基準に係る届出書添付書類
とされており、注5の届出に必要な確認事項が記載されています。
また、厚生局が公開している令和8年度の届出一覧でも、外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の注5について、様式95および様式98が掲載されています。
ただし、どの様式が必要になるかは、これまでのベースアップ評価料の届出・算定状況によって異なります。
「注5を算定するなら、とりあえず様式98を提出すればよい」というものではありません。
6.よくあるお問い合わせ
Q.「注5」は新しいベースアップ評価料ですか?
A.新しい評価料そのものではありません。
「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)」に設けられた取扱いで、一定の要件を満たす医療機関について、通常より高い点数を算定するものです。
Q.注5を算定すると、通常の評価料は算定できませんか?
A.注5の施設基準を満たして届出を行った場合は、注5に定められた点数を算定します。
通常の「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)」と注5のどちらを算定することになるのかについては、届出内容や施設基準を確認する必要があります。
Q.令和8年3月31日時点でベースアップ評価料を届け出ていれば、注5を算定できますか?
A.必ずしもそうとは限りません。
これまでにどのベースアップ評価料を届け出・算定していたかによって、令和8年度の届出内容が異なります。
特に、外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)のみを算定していた場合などは、厚生労働省の早見表上の取扱いを確認する必要があります。
Q.今までベースアップ評価料を届け出ていませんでした。注5は算定できますか?
A.一定の賃上げ実績を満たしている場合など、要件を満たせば注5の届出につながる場合があります。
令和6年度から令和8年度までの賃上げ実績について確認し、必要な様式を提出する必要があります。
Q.様式98を提出すれば注5を算定できますか?
A.いいえ。
様式98は、注5の施設基準に係る確認事項を届け出るための書類ですが、様式98を提出するだけで自動的に注5を算定できるわけではありません。
自院が注5の施設基準を満たしているかを確認したうえで、必要な届出を行う必要があります。
7.注5を算定する前に確認しておきたいポイント
注5の届出・算定を検討する場合は、まず以下の項目を確認しましょう。
☑ これまでのベースアップ評価料の届出・算定状況
☑ 令和8年度に算定するベースアップ評価料の種類
☑ 令和6年度から令和8年度までの賃上げ実績
☑ 対象職員の給与状況
☑ 事務職員の賃上げ実績
☑ 様式95の届出内容
☑ 必要に応じた様式98の提出
特に重要なのは、
「過去にどのベースアップ評価料を算定していたか」+「賃上げ実績」
の2点です。
この2点を確認することで、令和8年度にどのような届出が必要になるのかを整理しやすくなります。
8.まとめ
令和8年度診療報酬改定では、ベースアップ評価料について、継続的な賃上げに取り組む医療機関をより高く評価する仕組みが設けられました。
「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の注5」では、通常の外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)よりも高い点数を算定できます。
一方で、注5の届出については、
- これまでのベースアップ評価料の届出・算定状況
- 令和6年度から令和8年度までの賃上げ実績
- 必要となる届出様式
などを確認する必要があります。
そのため、
「自院は注5を算定できるのか?」
「どの様式を提出すればよいのか?」
「賃上げ実績はどのように確認すればよいのか?」
といった点について、早めに確認しておくことをおすすめします。
ベースアップ評価料の届出や施設基準については、厚生労働省・各厚生局の最新情報をご確認ください。
また、ORCAや電子カルテ等のシステムをご利用の医療機関様で、ベースアップ評価料の算定方法やシステム操作についてご不明な点がございましたら、当社までお気軽にお問い合わせください。